☆洗剤類と肌荒れの関係

 石けんや洗剤により皮膚が受ける影響として次の5つのポイントが示されている。
1)石けんや洗剤のアルカリがケラチンを変化させる。
2)石けんや洗剤からの脂肪酸が皮膚を刺激して、中毒性接触皮膚炎を起こす。
3)石けんや洗剤は皮膚表面に付着する皮脂を除去してしまうため酸性が保てなくなる。
4)石けんや洗剤の強いアルカリにより皮膚の化学的緩衝能力が失われる。
5)アミノ酸が除去され、角質層の防水性が失われる。
 中毒性接触皮膚炎は、洗剤のアルカリによる作用や、石けんから生じる遊離脂肪酸の刺激による作用、皮脂膜の除去による防御性の低下、界面活性剤のタンパク質との結合による刺激などが原因と考えられている。一般に我々が目にすることのできる皮膚刺激に関するデータは、この中毒性接触皮膚炎に関するものである。LASなどは多少刺激性が大きいと考えられているが、近年の身体洗浄剤や台所用洗剤に用いられている界面活性剤にはLASのように問題視されたものは使用されることが非常に少なくなり、合成界面活性剤であろうと石けんであろうと、特に肌の弱いというタイプの人でなければ、通常の使用条件の下で問題ないと一般には考えられている。特に、中毒性接触皮膚炎に関しては、合成界面活性剤を一括りにして石けんよりも有害であるとするのは間違いで、非常に刺激の少ないものから、洗浄力を重視した刺激性の大きなものまで幅が広い。
 アルカリの共存しない合成界面活性剤の中の低刺激性タイプのものが、アルカリと切り離せない石けんよりもより、中毒性接触皮膚炎に関する刺激が少ないと考えることもできる。非石けん系の界面活性剤を「合成界面活性剤」として一括して有害なものとして否定する傾向が消費者の一部にあるが、脂肪酸のモノグリセリンエステルという非イオン系の合成界面活性剤、実はこれは我々の皮膚表面にも存在する成分で石けんよりもずっと天然物とよべる安全性の高い物質なのだが、こういうものでさえ合成物だからダメだとする主張もある。天然には存在しない合成物ではあるが、ショ糖脂肪酸エステルも石けんよりも安全性の高い界面活性剤として食品工業などにも利用されている。毒性や生分解性等の試験結果から石けんよりも「やさしい」とされるものなのだ。
 添加物がなく、石けん純分の高い石けんが肌に優しいとする消費者レベルでの情報もよく見かけられるが、石けんの脂肪酸自体が皮膚に悪影響を及ぼすとする説もあるのだから、遊離脂肪酸の発生を防ぐような添加物のない純石けんが肌にやさしいと決めつけることはできない。石けんに含まれたモイスチャー成分によって肌の質が良くなるというタイプの人たちも多いことだろう。アレルゲンを少なくすることが何より重要だとされる症状の場合に、石けん純分がその人にとってアレルゲンとならないということを確認した上で、添加物の含まれていない純石けんを使うということは有効な手段となるであろうが、一般的な消費者レベルでの情報では、あまりにも「肌荒れ=アレルギー反応」としての捉え方に支配されている。
 インターネット掲示板等では、一般消費者レベルでの相互の消費者相談という、一種の消費者生涯学習システムとしての大きな可能性が示唆されるのだが、上記のように、一部の思いこみ的な情報に関しては、誤った情報の拡張システムとしての危険性もはらんでいることがわかる。
(2000年8月14日)

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