☆洗剤関連化粧品による肌荒れに関する消費者情報

 化粧品に関連しては必ずしも合成洗剤反対運動との直接的な関連は薄いように思われる。洗顔料、シャンプー、クリーム等に関しては、特に合成洗剤に反対するという立場にはない人々でも、化粧品に関連する化学物質の危険性に関する情報に接し、合成界面活性剤が用いられたものが皮膚に悪影響を及ぼすということを信じるようになり、結果として無添加の純石けんを中心とした「自然派」の美容法を取り入れるようになる人々が多いようだ。しかし、その化粧品をめぐる消費者情報環境にはかなり大きな偏りがある。
 化粧品業界は、その商品としてのマーケット規模の大きさから非常に魅力的な分野である。特に商品自体が必ずしも品質やコストパフォーマンス等ではなく、雰囲気や個性にあった商品というモノサシで選択される要素が大きな部分を占めるため、大企業が独占できる業界ではなく、中小の種々の業界が参入した多様な商品環境を形成している。
 そういう化粧品マーケットの中で主として一部の企業がとる特徴のあるマーケティング戦略がある。大手の化粧品メーカーを中心に、その商品の有害性を誇張して伝え、同時に自社製品の安全性を訴えることによって販売するという手法だ。いわゆる「危険です商法」または「安全です商法」と呼ばれる悪質商法の一種と同様の手法だ。「アルミはアルツハイマー病の原因になるので、現在使っているアルミ鍋を廃棄して自社のステンレス鍋を購入せよ」というパターンや、「水道水には発ガン物質が含まれている。ガンにならないように自社の浄水器を購入せよ」というパターンなどが相当する。実際に悪質な問題として表面化するのは、同等製品の市販価格に比較して相当に高額な物品を訪問販売等で購入させた場合などであるが、必要以上に危険性を誇張して伝え、消費者の不安を煽り立てて自社の商品を購入させようとするのは、基本的には悪質商法の一種と判断すべきだろう。
 その、化粧品に関する「危険です商法」において危険性が指摘されるのが、大手化粧品メーカーが販売する化粧品に含まれる合成化学物質であり、とりわけ合成洗剤反対運動から種々の有害説(そのほとんど全てに情報としての問題があるが)が発せられている合成界面活性剤は絶好の攻撃対象となる。そうすれば、合成物を使用しないというだけで、ある種の差別化が可能となる。例えば、身体洗浄料として添加物を含まない石けんを販売するといった手法は、何の技術開発もしないで非常に楽に商売ができることになる。商品の変質等が当該商品だけでなく企業イメージそのものを傷つけるというリスクを背負う大手化粧品メーカーには、無添加石けんの製造・販売といった離れ業は到底実行できないことなのだ。
 このように、合成洗剤に関連する化粧品のネガティブな情報が飛び交うことは、そのマーケティング環境から必然的な事ととして捉えることができるのだが、それに合成洗剤追放を目的とする組織に関与する人々、また一般消費者の中で合成物、特に界面活性剤の有害情報を信じてその善意から合成物排除のいわゆる「自然化粧法」を推奨する人々によって、圧倒的に石けん賞賛型の情報が、インターネット上の洗剤関連化粧品情報の主役となることになる。
(2000年8月14日)

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