☆非石けん系シャンプーはハゲの原因になる?
さて毛髪自体の質に関しては、以上のように毛髪への脂肪酸の残留という現象をキーポイントとして種々の現象の理解が可能となるが、もう一つの問題点である頭皮への影響という点についてはどのように理解すればいいだろうか。この点については、頭皮だけでなく身体全体の皮膚への影響の中の一部分として捉えた方がよいだろう。次章の「肌荒れと洗剤」の項目で少し詳しく見ていきたいが、非石けん系のシャンプーがハゲの原因になるという説について少々触れてみたい。
ハゲになるか否かというのは、実際の体験より語っている人は皆無であろう。一旦禿げてしまった部分から新たに毛髪を生成させるような「毛生え薬」や「育毛剤」の様な薬効が石けんにあるとは到底思われず、そういう話も聞いたことがない。当然、石けん系シャンプーを使って禿げた人が通常の非石けん系シャンプーを使用して、その効果で毛髪が再生するというようなことも聞いたことがない。そんな薬効がある成分であるのならば、とっくの昔に「シャンプー」ではなく、より付加価値の高い「毛生え薬」として販売されているはずだからだ。
また、石けん系シャンプーと非石けん系シャンプーのどちらかを使えば明らかにハゲが進行するというのならば、その両方の集団間での差も明確になっているはずだ。特に、石けん系シャンプー支持者が非石けん系シャンプーがハゲの原因であるとする説が多々見られるのだが、それなら石けん系シャンプー使用者を集めて、その他の人々とのハゲの率の差を明らかにし、その様子を宣伝に使えばよい。しかし、それも実際にはできない。
要は、非石けん系シャンプーのハゲ原因説は、そういった内容の情報に接した者で、実際の石けん系シャンプーと非石けん系シャンプーとの洗い上がりの感触の差から受ける印象が大きく影響していると考えられる。石けん系シャンプー使用者の毛髪は上述したように内部に脂肪酸を含んでおり、表面にも脂肪酸の膜が覆っている。それに対して、非石けん系のシャンプーで洗髪する場合には、毛髪の表面を陽イオン界面活性剤で覆うタイプのリンス処理を行うことが多い。すなわち、毛髪表面は油の性質となって滑りやすいが、実際の油のようにべとつかないというタイプの処理である。一方、石けん系シャンプーでの脂肪酸は、油そのものなのでべとつく。つまり、非石けん系のシャンプーがサラサラタイプであるのに対して、石けん系シャンプーはベトベトタイプの処理ということになる。同じ太さの毛髪でも、サラサラタイプの方がより細くなったように感じることになる。
だから、よりがっしりとしたタイプの髪質を好むならば、非石けん系のシャンプーを用いている場合には椿油等の粘性の高い油分で洗髪後毛髪を処理し、洗髪時にはシャンプーを少量にして油分を取り除いてしまわないように、やや手抜きの洗髪をすれば良い。石けん系シャンプーでの洗髪時よりもこしのある洗い上がりが得られるだろう。そうすれば、非石けん系シャンプーを用いていても毛髪が細くなったような感触は受けないだろう。
もちろん、石けん系シャンプーも非石けん系シャンプーも、それぞれが誰にでも安全なものなのではなく、個人差によって頭皮に大きなダメージを受け、それがハゲの原因になるということも考えられるだろう。石けんもその他の界面活性剤も皮膚の刺激物であるために、シャンプーとして使用した後は十分にすすぐ必要があることも重要だ。シャンプー後にろくにすすがない場合に、それが原因でハゲになるということも決して考えられないことではない。非常に丁寧な洗髪を行い、毎日1時間も2時間も界面活性剤に頭皮を接触させるというのも、何らかの問題が起こっても当たり前という自殺行為になろう。但し、現時点の情報では非石けん系のシャンプーがハゲの原因になるという情報は誤った情報として破棄されるべき情報だと考えられる。
(2000年8月12日)
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