表面反射率と汚れ量の関係(Q&A_016)

洗浄試験で洗浄効率を評価する際に表面反射率を用いる場合が多い。一般に汚れ付着量が多くなると表面反射率は低くなるので、表面反射率と汚れ付着量とは負の相関性を示す。しかし、クベルカムンク式のK/S関数を用いて表面反射率をK/S値に変えてやると、その値は汚れ付着量と比例するので、汚れ量から求める洗浄率を表面反射率から求めることができる。

[表面反射率とは?]
固体表面に照射した光の反射光の割合を百分率で表したものが反射率であり、反射される以外の光は表面に吸収される。物体表面の色を測る際には可視光線の中の赤色光、緑色光、青色光を別々に物体に照射してそれぞれの反射率を測定する方法が基本となる。可視光線の短波長側から長波長側へ紫、赤紫、赤、橙、黄、黄緑、緑、青緑、青、青紫と色が変化するが、赤色光、緑色光、青色光の3種の光を適宜混ぜれば大部分の色の光を作り出すことができる。仮に下図に示すように赤色光、緑色光、青色光を物体に当てるとする。3色光をほぼ均一に混ぜれば白色光になるので、白色光を当ててもよい。赤色光と緑色光は物体に吸収され、青色光のみが反射すれば、その物体は青色に見える物体である。3色の光を当てて全てが反射すれば物体は白色、3色の光が全て吸収されてしまえば黒色、3色光とも中途半端に反射すれば灰色となる。このように、赤色光、緑色光、青色光の反射率を求めれば固体の色を数値として表すことができるのだが、XYZ表色系では標準化した赤色光の反射率をX値、標準化した緑色光の反射率をY値、標準化した青色光の反射率をZ値とする。なお明度は緑色光の反射率Y値で表される。

反射率

[クベルカムンク式]
クベルカムンク式は次式で表される。
K/S = (1-R)^2/2R
ここに、K:吸収係数、S:散乱係数、R:反射率/100 を表す。K/S値はRとの間に下図の関係がある。反射率が小さい場合にK/S値は大きいが、反射率が少し大きくなるとK/S値は急激に減少し、その後減少率が少なくなりながら反射率の増加とともにK/S値は小さくなる。このK/S値が固体表面の着色物質の質量に比例関係を示す値であり、汚れの質量の代わりに洗浄率算出に用いることができる。

クベルカムンク式

[K/S洗浄率]
K/S洗浄率とはクベルカムンク式のK/S値を用いて計算される洗浄率で、下記の式で表される。
D(%)=((K/S)s-(K/S)w)/((K/S)s-(K/S)o)×100
ここに、D(%):K/S洗浄率、(K/S)s:洗浄前の汚染布の表面反射率から計算したK/S値、(K/S)w:洗浄後の汚染布の表面反射率から計算したK/S値、(K/S)o:汚染前の原白布の表面反射率から計算したK/S値である。
こうして求められるK/S洗浄率は汚れを定量して求めた洗浄率とほぼ一致することが種々の研究結果で認められている。但し、汚れ量が過度に多い場合、洗浄中に汚れ粒径が変化する場合、洗浄過程で汚れの色相が変化する場合などにはK/S洗浄率は汚れ量との関係がずれてしまうことになる。

=====
横浜国立大学名誉教授 大矢 勝
oya@=@detergent.jp  ←@=@を@に変えてください 

Q&Aコーナーへ
洗浄・洗剤の科学のページへ