XYZ表色系とL*a*b*表色系(Q&A_014)

色を表すシステムは表色系とよばれ、マンセル表色系、XYZ表色系、L*a*b*表色系などがある。色の三属性として色相、明度、彩度があるが、マンセル表色系はマンセル色票集という色見本と照らし合わせて対象物の色の三属性を決定する。一方、XYZ表色系とL*a*b*表色系は測色計や色差計を用いて測定することができる。

[XYZ表色系]
可視光線を物体に照射し、照射した光の何パーセントが反射するかを指標としてその物質表面の色を求めることができる。照射する光は赤色光、緑色光、青色光の3種でそれぞれの光を当てた場合の反射率をX値、Y値、Z値とする。図中にプロットして色を表す場合には色度図(CIE 1931 XYZ色空間)を用いるが、その横軸x、縦軸yは、それぞれ次の関係式でX,Y,Zから計算される。
x = X/(X+Y+Z)
y = Y/(X+Y+Z)
X値は赤色光を当てた場合の反射率であり、物体の表面が赤色ならば当てた光の大部分が反射するが、赤の補色である青緑色の割合が増えると大部分の光が物体に吸収されて反射率は減少する。よって、x値が大きい場合は赤色に、x値が小さい場合は青緑色の要素が大きい色相になる。
Y値は緑色光を当てた場合の反射率であり、物体の表面が緑色ならば当てた光の大部分が反射するが、緑色の補色である赤色の割合が増えると大部分の光が物体に吸収されて反射率は減少する。よって、y値が大きい場合には緑色に、y値が小さい場合は赤色の要素が大きい色相となる。
真っ白の表面はX,Y,Z値共に100%近くの値になり、真っ黒の表面は何れも0%近くになる。またx値とy値の両方が0.3~0.4付近の値になると彩度が低くなり白色~灰色~黒色の系列の色合いとなる。
そして、色を表す場合には一般にはYxy表色系としてY値、x値、z値の3つの指標を用いる。x値とy値は上記のように色相+彩度を表し、Y値は明度を表す。
なお、洗浄試験で表面反射率を利用して洗浄率を算出する場合、一般にはこのY値を反射率とする。Y値は可視光線の波長の中の真ん中に位置する光であり、その反射率は人の目で感じる明るさに最も関連する。

[L*a*b*表色系]
XYZ表色系で測色装置を用いて固体表面の色を数値化することができるが、塗料の色調整、染色物の堅牢度評価など、基準色からの色変化の度合いを調べるニーズにXYZ表色系では対応し難い。色の差をより人の感覚に近づけたものがL*a*b*表色系と捉えてよい。
単に「Lab表色系」といった場合、Hunter 1948 Lab表色系と、それを改良したCIE 1976 L*a*b*表色系を表す場合がある。CIE LabもL*a*b*表色系であり、特に昼光シミュレーションの標準光源であるD50を用いるものは、CIE Lab D50とよばれる。

L*値は明るさを示し、a*は赤(+)⇔緑(-)の色味、b*は黄(+)⇔青(-)の色味を表す。そして一般に色差と呼ばれるものはL*a*b*表色系のデータをもとに次式のΔEを計算するものである。
ΔE = SQR((ΔL*)^2 + (Δa*)^2 + (Δb*)^2)
ここにΔL*はL*の変化量、Δa*はa*の変化量、Δb*はb*の変化量を示す。またSQR()は√を、^2は2乗を表す数式である(EXCEL等)。
近年高価なものから安価ものまで種々の色差計が市販されているが、基本的にはこのΔEを簡単に測定できるようになっている。

さて、L*a*b*表色系とXYZ表色系の関係であるが、下記の式でL*値、a*値、b*値はX,Y,Z値から下記の式で計算できる。なお、Yw、Xw、Zwは白色点のY値、X値、Z値でありt値の範囲を最大値1にしている。

t>(6/29)^3の時   f(t) = t^(1/3) 
t<=(6/29)^3の時 f(t) = (t*(29/3)^3 + 16)/116
L* = 116*f(t)-16  t=Y/Yw
a* = 500*(f(t1)-f(t2)) ここに t1=X/Xw、t2=Y/Yw
b* = 200*(f(t1)-f(t2)) ここに t1=Y/Yw  t2=Z/Zw

なお、(6/29)^3は0.008856程度なので、Y/Ywの場合Yw=90~100%程度の時、f(t)の式が変わるのはY/90~Y/100=0.008856であり、その時のY=0.797%~0.8%。X値、Y値、Z値とも1%を切るような低反射率の時を除いて大部分の場合はf(t) = t^(1/3)として下記のように計算できる。
L* = 116*(Y/Yw)^(1/3)-16
a* = =500*((X/Xw)^(1/3)-(Y/Yw)^(1/3))
b* = 200*((Y/Yw)^(1/3)-(Z/Zw)^(1/3))

洗浄関係では明度が一番重要な要素となるが、XYZ表色系ではY値、L*a*b*表色系ではL*値が関与する。Yw=95%程度の時、綿白布のY値=85%、L*値=96、湿式人工汚染布のY値=40%、L*値=71%であり、洗浄してY値=50%となったとき(K/S洗浄率=49%)のL*値=77.8となる。明度に関してL*値は湿式汚染布の洗浄挙動をみるには変化が少なく、もっと濃色の部分を数値化するのに適していることになる。

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横浜国立大学名誉教授 大矢 勝
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