アンモニア水溶液のpHの計算法(Q&A_011)

アンモニアは化学式NH3で表される弱塩基である。水中では一部がH2Oと反応してNH4OHとなってOH-を放出してアルカリとしての性質を出す。アンモニアは1.7%、0.17%、0.017%の濃度でpHはそれぞれ11.62、11.12、10.62と計算される(25℃)。以下、pOHとpHの計算方法を説明する。

アンモニアの解離式は次式で表される。
NH3 + H2O ⇄ NH4+  + OH-
アンモニアは弱塩基なので、左辺の電離していない状態が大部分を占め、右辺のOH-を放出する形のイオンになっているのはごく一部である。放出されるOH-のモル濃度[OH-]は低くなるので水酸化物イオン指数pOHは同一モル濃度で水酸化ナトリウム等よりも大きくなる。重要なのはアンモニア全体の、どの程度の割合が電離するかであるが、それは塩基解離定数(Kb)として分析化学の教科書、その他の資料で調べることができる。アンモニアの25℃のKbは10^-4.75 (=1.79×10^-5)である。

[1MのNH3のpHと解離度]
NH3、NH4+、OH-のそれぞれのモル濃度をそれぞれ[NH3]、[NH4+]、[OH-]で表すと、
Kb = [NH4+][OH-]/[NH3]
[NH4+]=[OH-]なので、
[OH-]^2 = Kb × [NH3]
1 Mのアンモニアの場合、
[OH-]^2 = 10^-4.75 ×1 = 10^-4.75
[OH-] = 10^-2.375
pOH = -log[OH-] = 2.38
pH = 14-pOH = 11.62
なおアンモニアの解離度に関しては1Mに対して[OH-] = 10^-2.375Mなので、
[OH-]/[NH3] =(10^-2.375)/1 = 0.0042
溶かしたアンモニアの約0.4%分のみが解離していることになる。

[0.1MのNH3のpHと解離度]
1Mの10倍希釈の10^-1 Mのアンモニアの場合、
[OH-]^2 = 10^-4.75 ×10^-1 = 10^-5.75
[OH-] = 10^-2.88
pOH = -log[OH-] = 2.88
pH = 14-pOH = 11.12
10倍希釈でpHが約0.5減少しており、10倍希釈でpHが1低下する水酸化ナトリウムとは違いがあることがわかる。
また解離度に関しては
[OH-]/[NH3] = (10^-2.88)/(10^-1) = 10^-1.88 = 0.0132
溶かしたアンモニアの約1.3%分が解離していることになる。

[0.01MのNH3のpHと解離度]
1Mを100倍に希釈した10^-2 Mのアンモニアの場合、
[OH-]^2 = 10^-4.75 ×10^-2 = 10^-6.75
[OH-] = 10^-3.4
pOH = -log[OH-] = 3.38
pH = 10.62
100倍希釈で1MのpH11.62からpHが1減少したことになり、10倍希釈でpHが1減少する水酸化ナトリウムとは違いがあることがわかる。
なお解離度に関しては
[OH-]/[NH3] = (10^-3.38)/(10^-2) = 10^-1.38 = 0.042
溶解したアンモニアの約4.2%分が解離していることになる。

[w/v%濃度との関係]
アンモニアのモル濃度とw/v%濃度との関係を考える。アンモニアのモル質量=17.031g/molであり、1Mで17g/L=1.7g/100mL=1.7%である。
アンモニア濃度、1.7%、0.17%、0.017%に対して
pOHは2.38、2.88、3.38
pHは11.62、11.12、10.62
なお、かゆみ止めのキンカンのアンモニア濃度は約2%(1.18M)であり、
1.18=10^0.072
[OH-]^2 = 10^-4.75 ×10^0.072 = 10^-4.68
[OH-]=10^-2.34
pOH = 2.34
よって、キンカンのpHは11.66程度になると計算される。

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横浜国立大学名誉教授 大矢 勝
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