酢酸水溶液のpHの計算法(Q&A_007)
酢酸は化学式CH3COOHで表される弱酸である。今回はこの酢酸水溶液のpHを計算してみよう。
酢酸の解離式は次式で表される。
CH3COOH ⇄ CH3COO- + H+
酢酸のような弱酸の場合、左辺の電離していない状態が大部分を占め、右辺のH+を放出する形のイオンになっているのはごく一部である。放出されるH+の濃度[H+]は低くなるのでpHは塩酸等よりも大きくなる。重要なのは酢酸全体の、どの程度の割合が解離するかであるが、それは酸解離定数(Ka)として分析化学の教科書、その他の資料で調べることができる。酢酸の25℃のKaは10^-4.8 (=0.0000158)である。
[1Mの酢酸水溶液のpHと解離度]
CH3COOH、CH3COO-、H+のそれぞれのモル濃度をそれぞれ[CH3COOH]、[CH3COO-]、[H+]で表すと、Kaは次式で表される。
Ka = [CH3COO-][H+]/[CH3COOH]
[CH3COO-]=[H+]なので、
[H+]^2 = Ka × [CH3COOH]
1 Mの酢酸の場合、
[H+]^2 = 10^-4.8 ×1 = 10^-4.8
[H+] = 10^-2.4
pH = -log[H+] = 2.4
酢酸1Mに対して[H+] = 10^-2.4なので、
[H+]/[CH3COOH] = (10^-2.4)/1 = 0.004
ということで、溶かした酢酸の0.4%分のみが解離していることになる。
[0.1Mの酢酸水溶液のpHと解離度]
1Mの1/10の10^-1 Mの酢酸の場合、
[H+]^2 = 10^-4.8 ×10^-1 = 10^-5.8
[H+] = 10^-2.9
pH = -log[H+] = 2.9
10倍希釈でpHが0.5増加しており、10倍希釈でpHが1増加する塩酸とは違いがあることがわかる。
解離度に関しては
[H+]/[CH3COOH] = (10^-2.9)/(10^-1) = 10^-1.9 = 0.0125
約1.25%分が解離していることになる。
[0.01Mの酢酸水溶液のpHと解離度]
1Mを100倍に希釈した10^-2 Mの酢酸の場合、
[H+]^2 = 10^-4.8 ×10^-2 = 10^-6.8
[H+] = 10^-3.4
pH = -log[H+] = 3.4
1M溶液から100倍希釈でpHが1増加しており、10倍希釈でpHが1変化する塩酸とは違いがあることがわかる。
なお解離度に関しては
[H+]/[CH3COOH] = (10^-3.4)/(10^-2) = 10^-1.4 = 0.04
約4%分が解離していることになる。
酢酸のw/v%濃度(モル濃度)とpHの関係であるが、酢酸のモル質量=60.05g/molであり、1Mで60g/L=6g/100mL=6%である。
6%(1M) pH=2.4
0.6%(0.1M) pH=2.9
0.06%(0.01M) pH=3.4
なお、食酢の酢酸濃度は4%程度である。
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横浜国立大学名誉教授 大矢 勝
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