塩酸水溶液のpHの計算法(Q&A_006)

pHは水溶液の酸性~中性~塩基性(=アルカリ性)の度合いを数値化する指標である。pHはpower of Hydrogenの略称で、powerは指数を意味するので、pHは日本語では水素イオン指数と呼ばれる。pHの計算方法であるが、水素イオンのモル濃度(mol/L)を[H+]で表すと、次式で表される。
pH = -log[H+]
以下、塩酸水溶液を例にpHを計算してみよう。

塩酸はモル質量が36.46g/molの塩化水素HClの水溶液である。モル濃度はMの単位(=mol/L)で表されることが多いが、1Mの塩酸水溶液は36.46g/L=3.64g/100mL=3.64%の濃度となる。この1M(=3.64%)の濃度の塩酸水溶液のpHを求めてみる。
※ 以下べき乗記号「^」を用いている。10の-2乗であれば10^-2としている。これはEXCEL等でも共通する用法である。

塩酸は強酸であるため水中に存在するHClの全てがH+とCl-に電離すると考える。すると、1Mの塩酸水溶液に含まれるH+の濃度[H+]も1Mとなる。pHは以下のように求められる。
pH = -log(1) = 0
1MのH+が含まれる水溶液のpHは0になるのである。
1Mの1/10の0.1M(0.364%)の場合は、
pH = -log(0.1) = -log(10^-1) = 1
pHは1となる。
1Mの1/100の濃度では
pH = -log(10^-2) = 2
1Mの1/1000の濃度では
pH = -log(10^-3) = 3
このように塩酸を10倍ずつ薄めるとpHが1ずつ大きくなることが分かる。

トイレ用の酸性洗浄剤で塩酸(塩化水素の水溶液)を主成分とするものがあるが、その濃度は塩化水素10%弱である。10%以上の濃度の塩酸水溶液は毒物および劇物取締法(毒劇法)で劇物に指定されているため取り扱いが非常に面倒なので、家庭用品では10%以下の濃度に抑えられている。そこで劇物の限界の塩化水素10%濃度の塩酸水溶液のpHに着目すると、塩化水素濃度で2.74Mとなるので、pHは以下のようになる。
pH = -log(2.74) = -0.438
pHはマイナスの値になってしまうのである。
但し、このレベルの濃度では理論値と実測値は食い違う場合が多いし、マイナスのpHまで測定できる装置も少ない。

以上、塩酸を例にpHを計算してみた。強酸のpHは比較的簡単に計算できるが、弱酸になるとpHの計算にはひと工夫が必要になる。

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横浜国立大学名誉教授 大矢 勝
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