洗浄メカニズムの基礎(Q&A_005)
洗浄メカニズムとは汚れがどのようにして除去されていくのかの科学的な説明であるが、基本的には分離型、溶解型、分解型の3つのパターンに分類して理解することができる。
分離型洗浄メカニズムは汚れの性質は変えないで、塊の状態として被洗物から引き剥がすタイプの汚れ除去機構である。たわし等で擦り落とす、高圧水で削り取る、超音波を利用して除去するなど、機械作用によって汚れを落とす場合や、界面活性剤の力を借りて油汚れを包み込んで引き剥がす、アルカリの力を借りて粒子汚れの分散性を高めて引き剥がすなどの化学的作用を利用する場合もある。除去された汚れが被洗物に再付着しやすいので、再汚染防止の工夫が求められる場合も多い。洗浄効率から見ると溶解型洗浄や分解型洗浄よりも劣るが、界面活性剤を用いる方法などでは被洗物を傷めることが少ないので身体洗浄等には分離型洗浄が行われる場合が多い。
溶解型洗浄メカニズムは水や有機溶剤等の液体を用いて、汚れを溶解して除去する機構である。溶解とは結晶化して固まった汚れの分子やイオンを液中にバラバラにした状態に散らして溶液を透明(無色ではない)にしてしまうことを意味する。食塩や砂糖などの簡単に水に溶ける汚れを水で洗う場合は最も容易な溶解型洗浄である。色素汚れ、タンパク質汚れなどは弱いアルカリや弱い酸化剤等を用いて溶解しやすくする場合もある。水垢等は塩酸、酢酸、クエン酸などの酸を用いて、油汚れは有機溶剤を用いて溶解することができる。汚れを溶解する場合、汚れ表面近くの汚れ濃度が非常に高くなると溶解速度が低下するので、新たな溶解液を汚れ表面に送り込む必要があり、そのための機械力が有効に働く。
分解型洗浄メカニズムは主として有機物汚れに対して作用するもので、汚れを化学的に分解して汚れではない物質、或いは除去が非常に容易な物質に変化させて除去する機構である。炭水化物等を燃焼させて二酸化炭素と水に分解するなどの火炎洗浄が分解型洗浄の典型的なものである。漂白剤に含まれる酸化剤も分解型洗浄を担うもので、タンパク質をはじめとする有機物の化学結合を切断して除去しやすくする。UV洗浄、オゾン洗浄、UV-オゾン洗浄も酸化型の分解洗浄である。強アルカリは油脂を分解して脂肪酸とグリセリンに変えたり、タンパク質を分解するなどの作用がある。酵素洗浄も生化学的な作用で有機物を分解するので分解型洗浄に含まれる。
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横浜国立大学名誉教授 大矢 勝
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